西予市 農業水産課 周藤 功治

1 イノシシの生態について観察

鳥獣被害への対策をすすめるには、まずは鳥獣を知ること!
活動の中での自分なりの気づきや発見を掲載します。

 


2 活動経過

箱わな付近や、ぬた場付近にセンサーカメラを設置し、餌を食べる状況や、箱わなでの捕獲後の様子について観察。

 


3 活動をとおして

  • ・網目の広い箱わなでは、幼獣が逃げてしまう場合もある。
  • ・イノシシの成獣・幼獣では、警戒心が大きく違う。成獣になると、箱わなの怖さを理解している。成獣は、警戒心も強く、初めてセンサーカメラを設置した際も、すぐに反応。

「網目の広い箱わなでは、幼獣は逃走(動画1)」
「成獣・幼獣における警戒心の差異(動画2)」
「ぬた場付近でのカメラ画像(動画3)」

写真1「ぬた場発見」

写真2 ぬた場付近の立木の泥

 

 


4 活動をとおして

  • ・動画1での観察の結果、箱わなの網目の広さを改修し、その後幼獣を5頭捕獲できました。網目の幅には注意が必要です。また溶接が外れた箇所から1頭逃げられた事もあるので、箱わなの定期的な点検・補修は必要だと思います。
  • ・動画3は、本来ぬた場でのイノシシの様子が観察したかったのですが、設置したカメラの位置が悪かったため、ぬた場での様子が撮影できませんでした。センサーカメラの設置にあたっては、場所と角度にも注意してください。
  • ・イノシシの成獣は、非常に警戒心も強く、成獣になるまでに様々な学習・経験を積んでいることが想定されることから、成獣を箱わなで捕獲する事が困難な場合は、くくり罠等も活用した捕獲が必要と感じました。
    (※下記写真4及び5は、獣道沿いにくくり罠を設置し捕獲した様子です。)

 


写真3 箱わなに入った幼獣を眺める成獣

写真4 くくりわなで捕獲されたイノシシ

写真5 くくりわなで捕獲されたシカ


参考動画(タイトルをクリックください。)

専門家の解説


当該地域は、比較的傾斜地の多い山間の地域であり、ワイヤーメッシュ柵による圃場の防衛は進んでいるものの、柵の継ぎ目や裾部分からの侵入痕と補修痕が多くみられ、対策に苦慮している様子がうかがえました。痕跡から、イノシシの生息密度は、さほど高くはないものの、農地への依存度は高く、現状と同じ方法で柵の保守管理を続けているだけでは、地域が疲弊してしまと考え、当地では既設わなの効果的な運用方法について提案、指導しました。

既設の箱わなは、わなの目合いが大きく、亜成獣程度のイノシシが逸出してしまう危険が高かったため、その補強ポイントの解説と餌付けの手順について解説しました。一方で、当地には、集落を取り囲むような形で路肩の擁壁がそびえ立っていたことから、山側からの侵入ルートの特定方法についても解説し、ルート上での捕獲を提案しました。

結果、箱わなやくくりわなでの捕獲にも成功し、鳥獣管理専門員の映像データから、目合いの大きい箱わなでの捕獲が、どのような不利益を生むかについても、具体的な映像として地域住民に共有することができました。今後は日々の餌付けやわなの見回り、捕獲後の個体の処分方法等について、鳥獣管理専門員を窓口に役割分担の議論を進めていくことで、地域を主体とした獣害対策の体制整備が進んでくれるものと期待しています。