四国中央市農業振興課 三好 誠司

1.実践テーマ

  • (1)テーマ:地域で作る鳥獣害対策
  • (2)対象集落:新宮町、土居町
  • (3)目的:四国中央市は四国3県と接しており、他からの侵入が容易なところである。その中で近年特に被害が大きいニホンザルへの対策として地域全体での対応と個体数減少のための捕獲を目的とする。

 


2 活動経過

(1)活動内容

①ニホンザルの捕獲
・大型囲いわなの選定
・エサの選定

②地域での有害鳥獣対策
・移動ルート検証への協力
・防除意識の向上
・自己での捕獲

 


3.活動結果

①ニホンザルの捕獲

  • ・被害状況を確認し、地域での餌やり見回りを条件に平成29年9月より大型囲いわなを設置した。
  • ・平成31年1月現在28頭の捕獲に成功した(動画1)。
  • ・10月3日以降は捕獲に至っておらず、エサについて検討し、ポップコーンを試してみたが近寄らなかった。

写真1:大型囲いわな(サークルM)

 


捕獲日 捕獲数
5月13日 9頭
6月13日 2頭
6月21日 3頭
7月9日 9頭
7月27日 4頭
10月3日 1頭
図1:H30年度新宮地区サル捕獲数

 


②地域での有害鳥獣対策

  • ・移動ルートの検証を地域住民との会話の中で推定した。センサーカメラを設置したところ寛いでいる姿が確認でき、サルにとって生息しやすい場所であることがわかった(動画2)。
  • ・防除のために電気柵を設置する等、当該地区における住民の鳥獣害対策意識向上がみられた。
  • ・土居町天満地区において、農家自身が狩猟免許を取得し、大型はこわな、大型囲いわなによるサルの捕獲ができた。
  • ・イノシシの被害もあり、そのために狩猟を近々辞める予定であるくくりわなの捕獲実績が多い方から技術伝承を受けるべく促した。

写真2:電気柵の設置

写真2:技術継承を受ける農家

 


4.考察

  • ・捕獲は一定の成果が得られた。
  • ・地元を主体とすることで有害鳥獣対策意識の向上がみられた。
    特に中山間地域において有害鳥獣対策は喫緊の課題ではあるが、個人での取り組みには限界があるなかで、狩猟者が減少しており、地域での捕獲が必要である。その中で養成講座の実践活動を通して、地域における有害鳥獣対策の意識付けに非常に役に立った。

参考動画(タイトルをクリックください。)

専門家の解説


当該地域では、大型囲いわな等によるニホンザルの捕獲が進んでおり、被害軽減にも一定の成果を上げてきたものの、最近になってニホンザルの寄り付きが少なくなり、捕獲も停滞気味の傾向がみられていたため、より効果的なわなの設置場所選定に向けた検討方法を提案しました。

地域住民へのヒアリングや地形情報を踏まえて検討した結果、幾つかの捕獲候補地が選抜されましたが、日々の餌やりや管理の体制が見込めないという理由で、事業期間中に移設をしようという判断には至りませんでした。特に、新宮町では農家の戸数も少なく、個々の住宅や農地も広範囲に散在しているような状況であるため、捕獲のみに頼った対策には限界があると感じました。

今後は、より効率的に捕獲を推進できる地点において捕獲を継続できる体制の整備と並行して、個々の農地を確実に防衛するための柵の敷設についても、鳥獣管理専門員を窓口に地域が主体的に取り組んでいかれることを期待しています。