越智今治農業協同組合グリーン大西 田中 和正

1 実践テーマ

  • (1)テーマ:大西柑橘部会における鳥獣害対策
  • (2)対象地区:今治市大西町山之
  • (3)目的:自らの樹園地は自らが守ることの意識啓発と大西柑橘部会を主体にイノシシの防護と捕獲を目的に活動する。

 


2 活動経過

(1)大西柑橘部会員を対象に防護柵の設置講習会

防護柵の設置要件や地形等に応じて、電気柵又はワイヤーメッシュ柵、どちらの防護柵がいいのかといったことなど、設置に関する講習会を開催した。

(2)防護柵(ワイヤーメッシュ柵)の設置

農家からの相談を受け現場を確認し、防護柵をどういった形で設置するのがよいか、現場で専門家に助言いただいた。

 専門家からのアドバイスを参考に、被害農家へワイヤーメッシュ柵の設置を提案した。元々相談のあった園地だけでなく、周辺園地(農家3戸)を含めて共同設置すると、それぞれ個別に設置した場合の約半分の長さ(600m)で効率的に囲えることから、関係農家に提案し、共同設置の理解が得られた。

 ワイヤーメッシュ柵を設置するとしたら、園地側に張るか道側に張るのか、傾斜ではどれぐらいワイヤーメッシュを重ねて張るのか、現地を確認して、約一割増の長さが必要と実感した。

資材を事前に園地に配布し、設置作業は役割を分担して行った。柵のルートや位置を決める人、鉄筋を打ち込む人、ワイヤーメッシュを押さえる人、針金で止める人、それぞれの役割を決めることで効率的に進めることができた。

(3)防護柵(電気柵)の設置

農家からの相談を受け、現場を確認し、電気柵を設置することとなった。生産者が高齢で設置できないため、JAおちいまばり独自の作業支援組織「心耕隊」に設置作業を依頼。作業料金は一人当たり12,000円/日で、1日(2人)で設置できた。

(4)捕獲(猟友会との連携)

電気柵を設置する前に園地へ侵入していたイノシシをセンサーカメラで確認し、柑橘部会員でもある猟友会の方が捕獲した。

 9月1日から10月15日までの有害捕獲期間には、ベテランの捕獲員さんと面談し、園地へのイノシシの出没状況等を情報提供。その後、体長156cm(軽トラック荷台一杯の長さ)、体重約150kgのイノシシがくくりわなで捕獲された。

 捕獲協力をしていただいた7名が、有害捕獲期間中にイノシシ22頭など計30頭を捕獲。

 

3 今回の活動内容について

自らの樹園地は自らが守ること、捕獲も行う。

  • ①主に柑橘部会員を対象に防護柵設置講習会を開催し、対策の必要性について意識啓発できた。
  • ②農家からの被害相談を受け、園地環境等にあわせた防護柵の設置が行えた。
  • ③電気柵は心耕隊を利用して、ワイヤーメッシュ柵は当事者グループで、効率的に設置することができた。
  • ④猟友会メンバーでもある柑橘部会員へ出没状況などの情報を提供することで効果的に捕獲することができた。

 

4 今後の活動内容について

  • ①自らの園地を守る意識を高め、防護柵の設置はグループまたは地域全体で取り組むように進めたい。
  • ②あわせて各地域の猟友会の協力を得て、有害捕獲期間における捕獲強化を行っていきたい。
  • ③自らの園地は自らが守り、グループまたは地域全体で「守り」が出来れば、園地に入れなくなり、餌場がなく捕獲が容易にできる、そのような状況へ持っていきたい。

 

参考動画(タイトルをクリックください。)

専門家の解説


JA越智今治では、大西柑橘部会員を対象に、講習会の開催や心耕隊と呼ばれる設置支援組織を組織するなど、防護柵を中心とする自衛策の普及推進に努めてこられました。このため、本指導では、強度や管理のしやすさなどを考慮した柵の設置ルートを提案したり、設置する柵の種類に応じた指導のポイントを解説するなど、より実効的な柵を設置するためのノウハウを学んでいただきました。

また、イノシシによる被害が発生した農地では、実際に痕跡から侵入ルートをたどり、わなの設置適地を探す方法や、地元の捕獲支援体制の重要性も伝え、防護と捕獲を組み合わせた対策の有効性について解説しました。

新たに電気柵を設置した農地では、一度はイノシシの侵入を許しましたが、その後、侵入路をふさぐ対策を行ったことで再発を抑えることに成功し、イノシシの目線を意識した対策の重要性と効果について実体験から学んでいただくことができました。
また、地元猟友会と連携して、指導期間中にイノシシをはじめとする加害動物の捕獲にも繰り返し成功するなど、こちらも確かな成果をあげていただくことができました。

防護柵の設置については、多くの地域で資材費の10割補助を受けることで、自力による施工を選択していますが、高齢化や担い手不足が進む中山間地域では、人手の確保が大きな障壁となっています。また、いい加減な方法で設置した柵が、すぐに効力を失ってしまうという現実も各地で報告されています。心耕隊はこうした問題を解決する非常に有益な組織であると思いますので、今後は確かな知識と技術をもった鳥獣管理専門員が、両者の間をつなぐ存在となって活躍していかれることを期待しています。