南予地方局 農業振興課 地域農業育成室 栗原 凌真
１ 実践テーマ
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- （１）テーマ：
- 効果的な防護柵設置による鳥獣被害軽減と地域を担う若手狩猟者の育成
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- （２）活動地区：
- 宇和島市薬師谷地区
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- （３）目的：
- 宇和島市は愛媛県の中で最も鳥獣による農作物被害額が多く、鳥獣害対策が喫緊の課題となっている。また、薬師谷地区においても同様に、狩猟者の高齢化や、防護柵等の対策技術の不足を背景とした、シカ、イノシシ、ハクビシン、ノウサギ等による野菜、果樹の食害が課題となっている。（動画1～2）
そこで、①地区猟友会員と連携した捕獲活動②防護柵設置講習会による対策技術の向上③若手狩猟者の育成の３つを主軸に、鳥獣被害軽減を図る。
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- （４）協力者：
- 宇和島市、薬師谷地区農業者、宇和島地区猟友会
２ 活動経過
- （１）猟友会員と連携した捕獲活動
山間部に生息する加害個体を減少させるため、地区猟友会員と連携した、くくり罠によるシカ、イノシシの捕獲活動を実施した。また、宇和島市、地区農業者、猟友会員を交えた集落見回り活動を実施し、鳥獣被害軽減に向けた協議を実施した。 - （２）効果的な防護柵設置による被害軽減
薬師谷地区では、補助事業を活用して、計６戸でワイヤーメッシュ柵を導入する予定であったため、導入予定の農業者を対象に設置技術向上を目的とした、ワイヤーメッシュ設置講習会を開催した。講習会では基本的な設置方法及び園内の段差部分での設置方法について重点指導した。(写真１) - （３）若手狩猟者の育成
地区狩猟者の若返りを図るため、地区内の狩猟免許を取得している青年農業者と連携して捕獲活動を実施した。ワイヤーメッシュ策で防護された青年農業者の園地内でノウサギによる苗木の食害が確認されたため、侵入経路を特定するとともにノウサギ用くくり罠の作成、設置方法について青年農業者に指導した。(写真２)
写真１：ワイヤーメッシュ設置講習会を開催
写真２：ノウサギの捕獲活動を実施
３ 活動結果
- （１）猟友会員の捕獲技術向上、捕獲活動範囲の拡大
猟友会員と連携した捕獲活動では、設置時の枯葉による被覆が多いことから、くくり罠の作動が妨げられ、「からはじき」している事例が見られため、試験的に枯葉を減少させた罠を設置するよう提案した。1月には枯葉を減少させた罠でシカ1頭を捕獲でき、猟友会員の捕獲技術の向上を図ることができた。また、集落見回り活動では、捕獲活動について協議する中で、農業者から新たな範囲での捕獲活動の依頼があり、活動範囲を拡大し、捕獲活動に取り組むこととなった。 - （２）農業者の防止柵設置技術向上、被害の軽減効果の確認
講習会開催後の集落見回り活動において、事業で設置されたワイヤーメッシュ柵の見回り確認を実施した。園内の段差部分においても隙間なく設置されており、農業者の設置技術向上を確認できた。また、設置者を対象に被害軽減に関するアンケートを実施したところ、６人中2人（４人は冬季に作物を栽培していない）で被害軽減効果10割を確認し、適切な防護柵設置による被害軽減効果を確認した。 - （３）若手狩猟者の捕獲技術向上、地区猟友会員と連携した大型獣類の捕獲指導
１月には青年農業者園内に設置したくくり罠でノウサギを1頭捕獲できた。（動画3）
また、ノウサギの捕獲成功により、青年農業者が山間部でのシカ、イノシシの捕獲活動へ意欲的な姿勢となったことから、地区猟友会員と連携し、大型獣類のくくり罠設置方法について指導した。(写真4)
写真３：枯葉を減少させた罠でシカを捕獲
写真４：猟友会員から罠設置について指導
４ 考察及び今後の取組み
- （１）ワイヤーメッシュ柵による被害軽減効果の維持
ワイヤーメッシュの被害軽減効果のアンケートでは、６人中４人は冬季に作物を栽培していないことから、調査結果は「分からない」と回答していた。そのため、次回作付け以降に再度調査を実施し、被害が確認されるようであれば軽減に向けて対応する。 - （２）青年農業者の捕獲活動の推進
今回の活動では、地区猟友会員からの指導もあり、青年農業者の捕獲技術の向上を図ることができた。今後は地区猟友会員と連携を図りつつ、青年農業者による捕獲活動を推進することで、地区狩猟者の若返りと、更なる加害個体数の減少を目指す。
参考動画（タイトルをクリックください。）
専門家の解説
薬師谷地区では、シカやイノシシ、ハクビシン、ノウサギなど、多様な加害動物による被害や痕跡が認められ、農作物への執着も非常に強いという印象を受けました。
本事業では、既にワイヤーメッシュ柵の設置計画が進んでいたため、適切な柵の設置方法と管理上注意すべきポイントについて指導しました。今年度は柵を設置するタイミングが遅く、正確な効果の検証は次年度への持ち越しとなりましたが、設置後の様子を見た印象では、丁寧に設置していただいておりましたので、次年度以降、明確な効果を実感いただけるものと期待しています。
一方、捕獲については従事者が不足しており、思うように進んでいないという話でしたので、本事業では若手狩猟者の育成や効果的な捕獲技術の普及を軸に指導を進めてきました。具体的には、鳥獣管理専門員を通じて、シカやイノシシの痕跡の見方やわな設置場所の選び方、ハクビシンを捕獲するための小型わなの運用方法、ノウサギ捕獲用の首くくりわなの設置方法などを指導したことで、新たに免許を取得した若手狩猟者にも捕獲実績を上げていただくことができました。また、活動を通じて、集落の生産者と猟友会との交流の機会が増えたことで、これまで捕獲圧が掛かっていなかったエリアにもわなを設置いただけるようになったという出来事も、地域ぐるみで活動に取り組んだことの成果であると高く評価しています。
今後、シカやイノシシが設置済みの柵を避けて行動するようになれば、より痕跡は明確になりますので、本年度習得した技術や新たに増強された捕獲体制を活用して、地域の自衛力強化と被害の大幅な軽減を目指して活動いただけるものと期待しています。