伊方町役場 産業課付 地域おこし協力隊 大久保 玲香

1 テーマ 「柑橘をまもる!」

  • 活動集落:伊方町大江
  • 活動主体:大江営農組合
  • 対象鳥獣:イノシシ

 


2 活動経過

経緯:この集落には狩猟免許保持者がいないのでイノシシ対策を進めるとともに、集落民全体で獣害から柑橘園地を守っていく体制を構築したい

  • *集落住民2名が8月に狩猟免許取得
  • *聞き取りの結果、集落内全体にイノシシの目撃があり。捕獲・防御を同時に進めたい
  • *住民のほとんどが柑橘農家なので、農繁期(柑橘収穫期10月~)に入るまでにある程度対策したい

【捕獲】
最初にセンサーカメラを使用し、けもの道の利用頻度の調査
・はこわなの設置(5基)
・比較的に手に入りやすい芋で餌付け(動画1)

【防御】
ワイヤーメッシュ柵の設置
・約800mの設置
・収穫前の9月末に20名弱、半日で設置

 


3 活動結果

対象獣の捕獲:9月~12月 捕獲8頭(動画2~5)
被害状況:昨年と比べ目撃減、12月初旬までは被害報告なし

集落住民の変化:
鳥獣害対策の情報交換の機会も増え、来年度もワイヤーメッシュ柵を進めるなど集落全体で対策をしていく積極的な動き。
箱わなでの捕獲に関して、今までは他地域の狩猟者に任せきりだったが、大江集落内で見廻りや餌付けをする補助者の役割分担もできてきている。また、はこわなの設置(整地含め)にも住民に協力してもらうことによって、捕獲までの大変さも共有できた。
協力の中心は大江営農組合の会員だが、集落にはこの取り組みも周知しているので、目撃情報やわなの置き場所提案などは会員外の集落住民からの声もあり。
有害鳥獣対策ということで、集落全体で取り組み、イノシシ捕獲に至った場合の報奨金等は免許更新費用や対策費用に使用していく予定。

写真1 はこわな設置

写真2 ワイヤーメッシュ柵設置


4 考察

  • *実践活動を始めた9月はセンサーカメラにイノシシの群れが映っていたが、11月になり、柑橘収穫が本格的になり始めるとイノシシのけもの道ルートが変わったのか、カメラに映る頻度が少なくなった。
  • *イノシシにとってのエサ(柑橘類の果実)の少ない時期が柑橘農家にとっても捕獲に力を入れられる時期なので、捕獲できる時にできるだけ個体数を減らすようにしていきたい。
  • *1頭づつの捕獲しかできていないので餌付けを粘って、複数で捕獲を試みたい。
  • *ワイヤーメッシュ柵が破られた際にメッシュ柵を折り曲げて補修していた。
  • ・以前までは二重にして張りなおすという補修方法だったが、折り曲げての補修が効果的であると言い続けた結果、農家さんは実行してくれた!
  • ・メッシュ柵は見回りを定期的に進められるようにしていきたい

 

写真3 破られたメッシュ柵の補修

参考動画(タイトルをクリックください。)

専門家の解説


当該地域は、斜面に柑橘畑が点在する海沿いの傾斜地ですが、痕跡や被害・目撃情報からは、イノシシが集落を取り囲む形で広範囲に生息しており、道路上での目撃情報等も多かったため、捕獲を柱とする対策の推進を提案しました。また、既設のグループ柵と、今年度敷設を計画しておられる柵があったため、柵の設置や維持管理のポイントについて解説を行いました。

その結果、捕獲に関しては箱わなでイノシシ8頭と短期間に十分な実績を上げることができ、被害軽減にも一定の効果を実感していただくことができましたし、柵についても問題箇所の補修が進み、被害の軽減に貢献できました。また、何よりこれらの活動を通じて、地域住民が主体的に被害対策に取り組む姿勢が生まれたことの意義は大変大きいと思います。

一方で、見た目の結果には表れにくいものの、鳥獣管理専門員が窓口として関与したことの効果も確実に実感できました。捕獲では、わな前に誘引されていたイノシシの成獣個体が最後まで捕獲できなかったことで、餌付けの継続や捕獲のタイミングが効率的に捕獲を進める上で重要であることが共有されましたし、防護柵に関しては、裾の管理の重要性や突破された箇所の具体的な補修方法が地域で共有されました。

今後も引き続き鳥獣管理専門員が窓口となって、対策に関する正確な知識や情報が地域にもたらしていくことで、具体的にすべきことが明確になり、いっそう効果的で効率的な防除体制が確立していくものと期待されます。